ご家族・支援者の方へ
通ってほしいけど本人が乗り気でない。家族のすすめ方
「そろそろ、どこかに通えたらいいのに」。そう思っても、ご本人が乗り気でない。声をかけると、かえって空気が悪くなる。そんなふうに悩んでいるご家族は、めずらしくありません。
この記事では、説得するのではなく「ご本人が自分で決めるための材料を、どう渡すか」をお伝えします。
まず、あせらなくて大丈夫です
「早く動かないと」という気持ちは、家族として自然なものです。でも、ご本人にとっては、まだ準備の途中かもしれません。
乗り気でない理由は、いろいろあります。
- 何をする場所か、よく分からなくて不安
- 前に、うまくいかなかった経験がある
- 体調や気持ちの波が、まだ落ち着いていない
- 「働く」という言葉が、重く感じる
理由は、本人にもうまく言えないことがあります。まずは「今すぐ決めなくていい」という前提を、家族の側が持っておくと、話がやわらかくなります。
「説得」ではなく「材料を渡す」に切りかえる
説得は、こちらが答えを持っていて、それに合わせてもらう関わり方です。乗り気でない相手には、押しつけに感じられやすいものです。
かわりに、材料を渡す関わり方を考えてみてください。材料とは、ご本人が判断するための「情報」のことです。
- どんな場所で、どんなことをするのか
- 週に何日から通えるのか(事業所によって異なります)
- 見学だけでも行けるのか
- 合わなかったら、やめたり移ったりできるのか
こうした情報を、そっと置いておく。決めるのはご本人。この形だと、ご本人も身がまえずにすみます。
材料の渡し方、いくつかの例
渡し方にも、いろいろあります。ご本人の様子に合わせて選んでみてください。
- 口で全部説明しない。 一気に話すと、負担になりやすいです。「こういう場所もあるみたいだよ」と、ひとことだけにとどめる
- 紙やスマホの画面を、見えるところに置いておく。 その場で反応がなくても大丈夫。あとで、ひとりで見ていることもあります
- 「見学は、行っても利用しなくていいらしいよ」と伝える。 見学が「決定」ではないと分かると、ハードルが下がります
- 返事を待つ。 すぐに答えが返ってこなくても、せかさない
大事なのは、ボールをご本人に渡したまま、こちらが取り返さないことです。
つい言ってしまいがちな言葉に、気をつける
家族だからこそ、心配のあまり出てしまう言葉があります。悪気がなくても、ご本人を追い込むことがあります。
- 「いつまでこのままなの」
- 「みんな働いてるよ」
- 「頑張ればできるよ」
- 「行けば元気になるって」
こうした言葉は、ご本人が「責められている」と感じやすいものです。「元気になる」といった保証も、実際にそうなるかは人によります。
かわりに、こんな伝え方があります。
- 「行ってみて、合わなかったら、やめてもいいと思うよ」
- 「気になったら、いつでも言ってね」
- 「今のペースで大丈夫だよ」
決める力を、ご本人の側に残しておく言い方です。
家族だけで抱えず、相談できる人につながる
ご家族だけで進めようとすると、どうしても力が入りすぎてしまいます。あいだに入ってくれる人がいると、ぐっと楽になります。
その一人が、相談支援専門員(福祉サービスの利用を一緒に考えてくれる人)です。ご本人と事業所のあいだに立ってくれます。家族の心配も、聞いてもらえます。
どこに相談すればよいか、手続きがどうなるかは、お住まいの市町村によって決まりがちがいます。くわしくは、市町村の窓口や相談支援専門員にご確認ください。
また、家族が先に見学へ行って、様子を見てくることもできます。「こんな感じだったよ」と、後日ご本人に伝える材料になります。例えば、島根県松江市にあるKUKKULAのように、見学を受けている事業所や、作業の内容を紹介している事業所もあります。まずは雰囲気を知るところからで大丈夫です。
さいごに
ご本人が乗り気でないのは、わがままでも、後ろ向きでもありません。まだ、決める材料がそろっていないだけかもしれません。
ご家族にできるのは、材料をそっと渡して、待つこと。決めるのは、ご本人です。時間がかかっても、それでいいのだと思います。
手続きや制度のことで分からない点は、市町村の窓口や相談支援専門員に確認しながら、少しずつ進めていってください。ご家族が一人で抱え込まないことも、同じくらい大切です。
